それ、「マルチ商法」ぢゃないでせう
4月23日附朝日新聞東京本社版夕刊に「(一語一会)タレント・壇蜜さん 母からの言葉」といふ特輯記事がのってゐる。
その中にこのやうな記述がある。
東京都内の実家近く、ビルの1階に見慣れない店ができていた。通りがかりの人に無料でパンを配っていて、母や祖母も何度かもらった。なかをのぞくと、多くのお年寄りが話に聴き入っていた。3、4カ月後、店は突然なくなった。高額な布団や健康食品を売りつけるマルチ商法だと、後で知る。
それ、マルチ商法ぢゃないでせう。マルチ商法の定義はいろいろあるやうだが、基本的には連鎖販賣取引およびそれに類するもの、である。英語のMulti-Level Marketingが語源で、販賣組織にピラミッド型のヒエラルキーを形成し、上位者は下位者の販賣實績の一部をコミッションとして得ることができるやうな形態をとってゐる。ものの販賣を介したねずみ講のやうなものだ。
この記事の販賣形態はどう見てもマルチレベルな販賣形態ではない。かういふ無料もしくは格安物品で客を釣り、亢奮・催眠状態におとしいれ、高額かつ割高な物を賣りつけるのは、催眠商法、もしくはSF商法(新製品普及会といふ業者名に由來する)といふ。
この記事を書いた中島秀憲記者はマルチ商法とは惡徳商法の別名だとでも思ってゐるのではないか。新聞記者としてあまりに無知、不勉強である。
おそらくは文化部の記者だらうから、かういふ社會面的知識が貧弱だったのだらうが、それがそのまま紙面にのってしまふといふのはまったくもっていただけない。毎度のことながら、デスクや校正擔當はまともに仕事をしてゐるのか疑念に耐へない。
« 阪大さん、嘘をついちゃいけません | トップページ | 天聲人語の粗雜なくくりかた »
この記事へのコメントは終了しました。


コメント