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歷史常識のない「歴史研究家」

朝日新聞(東京本社版)の6月16日付夕刊揭載の「はみ出し歴史ファイル」は『坂上田村麻呂 蝦夷の首領、助命はならず』といふ記事。執筆者は「歴史研究家・野呂肖生」。
この人は以前にも姓と名字とを混同してゐたり、則天文字は漢字ではないと書いたりしてゐるのだが、今回もひどい。書き出し早々

 8世紀の末、桓武天皇は平安京の造営につとめつつ、東北の蝦夷の征討に力を入れた。その立役者が初の征夷大将軍の坂上田村麻呂だ。(ルビ省略)

ときた。これって、自稱歷史好きの知ったかくんのやる典型的なまちがいの一つですよね。
史料にのこるかぎりでの征夷大將軍の初見は大伴弟麻呂。坂上田村麻呂は弟麻呂のもとで副將軍をつとめ、その後、征夷大將軍になってゐる。坂上田村麻呂は「初の征夷大將軍」ではない。
なほ、弟麻呂以前にも鎭東將軍(巨勢麻呂)、征夷將軍(多治比縣守)、征東將軍(大伴家持)、征東大將軍(紀古佐美)の記錄がある。これらの官職も基本的には征夷大將軍と同一視されるものだ。
姓と名字のちがいを知らず、則天文字を漢字ではないといひ、坂上田村麻呂を初の征夷大將軍といふ。これではとても「歴史研究家」の名に價しない。
ちょとしらべてみたら、この人、もと某高校の敎諭で、某大學でも講師(おそらく非常勤)をつとめ、歷史敎科書の版元として知られる山川出版社などからも著書を出してゐるやうだが、それにしては歷史常識が缺如してゐる。朝日新聞も「歴史研究家」の肩書きを盲信せずに、すこしはチェックしたらどうだらうか。あれだけの大組織なのだから、この程度の歷史常識のある記者もいるだらうに。

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