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フィクションかノンフィクションかはっきりさせといてください

まづはリンク先を讀んでみてください。朝日新聞の讀書面にのった野口武彦著「幕末不戦派軍記」の書評です。評者は香山リカさん。
これを讀んで、どういふ構成の本だと思ひました?私は「お気楽な幕臣4人組」の日記を、解説をまじへて紹介する本だと思ひました。さう、丁度「元禄御畳奉行の日記」のやうな。江戸時代大好き、史料大好きな私は早速買ってみました。
目次にはかうあります。「発端 長州戦争の巻」「彰義隊の巻」「日光の巻」「奥羽朝廷の巻」「蝦夷共和国の巻」「あとがき」。
そのあとがきの冒頭。

 この一冊で活躍する(中略)四人組は、幕末の史料から抜け出してきて、フィクションの世界に漂い出た男たちである。

ええええええー!フィクションだったんですか!
あとの方にこの本の「成り立ちと構成」が書いてあるので、とびとびにひきます。

 右の『在京在阪中日記』にもとづいて最初に書いた歴史ドキュメンタリーが「幕末の遊兵隊」(『幕末気分』所収)である。(中略)この日記は将軍(引用者註 十四代将軍家茂)薨去のあたりで尻切れトンボに終っている。こんな連中が戦場に送り出されたらどうなるか。その後の運命を断片的な史料と想像力で補い、フィクションの形で鳥羽伏見の戦いに参加させたのが「幕末不戦派軍記」(『幕末伝説』所収)である。(中略)
 その続編がどうしても書きたくなって、四人を次々と維新戦乱の現場に投入した。(中略)
 単行本にまとめるに当たって、出発点になった「幕末の遊兵隊」をノベライズし、「発端 長州戦争の巻」と題して巻頭に据えた。『在京在阪中日記』では事実不明だが、四人組が長州戦争の前線に行ったという設定から物語が始発する。全五章はすべて史実を材料にしたフィクションである。(後略)

つまり、一種の歴史小説、てことですね。しかも、その日記がベースになってゐるのはせいぜい「発端 長州戦争の巻」の中ごろまで、といふことになりませうか。
小説に興味のない私としては「だったら買はなかったのになあ。」と言はざるをえません。香山さん、フィクションをノンフィクション、あるいはドキュメントのやうに紹介するのはやめてください。
あ、あわててつけくはへますが、この本自體は「史実を材料にし」てゐますし、多くの史料が出典を明記したうへで引用されてゐますので、けっして荒唐無稽なものではありません。幕末の一斷面を、その雰圍氣を知る、といふ面では有益な本だと思ひます。ただ私のニーズとはちがってゐた、といふだけで。
ついでなんで、海舟ファンの私から香山さんに憎まれ口を一つ。「勝海舟に至っては口も人もなかなか悪かった」なんて常識ぢゃありませんか。それは幕末も維新後もかはりませんよ。德川家達(十六代)を「三位」と呼び捨てにしてゐたやうな人ですよ。そもそも人がわるくなければ、幕末のあの状況の中で薩長とわたりあって德川家と慶喜をまもりぬくことができるわけありませんよ。海舟の魅力はその人のわるさにもあるんですよ。
といふわけで、わるい本ぢゃないのに「だまされたー」といふ氣になってしまった微妙な買ひ物でした。

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