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6月7日 手塚治虫文化賞贈呈式

東京會舘でひらかれた手塚治虫文化賞の贈呈式に行ってきた。なぜ筆者が、というと、同賞は候補作選定の段階で一般読者からの推薦を募集しており、大賞受賞作の推薦者から2名が贈呈式に招待される。これに当籤した、というわけだ。なんたる僥倖。一生分の運を使い果たしてしまったかもしれない。
式は17時30分からだが、案内状には17時15分までにこい、となっている。勿論、仕事が終わってからではまにあわない。よってこの日は年休。午後半休でもよかったのだが、へたに出ていって、帰れなくなると困るので、思い切って一日休んでしまう。
夕方まで時間があるので、買い物(本やらCDやら)とか、その他所用をおこないたかったのだが、未明に目がさめてしまい、当日乗に長文のコメントを書いたりしていたため、次に起きたのが中途半端な時刻になってしまい、断念。
早めに家を出たので、16時50分ごろについてしまった。
案内状にあるとおり、受付で封筒をわたすと、中身(招待状など)ごと回収されてしまう。名前をチェックしたら返してくれると思っていたのだが。しまった、中身を抜いて渡すのだった、と後悔。でも、後で聞くと、中身は返してもらった人もいるらしい。担当者によってまちまちだった模様。
資料などをもらう。資料は式次第、受賞作発表時の記事のコピー、選考経過や選評、過去の受賞作などが書かれた小冊子、それにピンバッジ。このピンバッジは毎年デザインがかわるのだそうで、これを楽しみに贈呈式に出席している人も多いらしい。今年は手塚治虫とアトムが肩を組んでいる図。
小冊子にあった選評を、「失踪日記」の部分のみ転載しておく。発表時に新聞に出ていたものもあるが、のっていないのもあるので、ファンには興味もあろうかと思うので。

 吾妻ひでおにしか描けない世界。画風が子ども向けなのに、中身は重い。このアンバランスが吾妻の特長だったが、この作品でそれを極限的に示した。(荒俣 宏氏評)

 ギャグ・マンガ家の宿命ともいえる暗闇に足を踏み入れ、また戻ってきた。驚嘆すべきことだ。それを娯楽読み物にしてしまうところが、もっととんでもない。地獄にいても観察してしまう性は、やはりギャグ・マンガ家。さすが吾妻。(いしかわじゅん氏評)

 マンガ家が自身の身辺雑記を描くことは、今、それほど珍しくない。その草分けである作者が、ガチンコで自分自身の体験を描くと、群を抜いて面白い。壮絶な内容だが、マンガとして純粋に楽しめる。吾妻の作家性がマンガというエンターテインメントを肌で分かっているからこそ、楽しませるのだと思う。(印口 崇氏評)

 アルコール依存症、失踪という異常体験を客観化しつつユーモラスに描いた異色作。体験だけに頼った手記マンガではなく、作家と自意識という日本近代文芸のテーマも読み取れる。(呉 智英氏評)

 これだけの体験をし、生還して作品として描ききった。惜しみない賛辞を贈りたい。ホームレスになっても、やがてガスの配管工になり、また不思議な道を辿り、マンガの世界に戻ってくる。泣き笑いのような感覚を私たちに抱かせ、人間に対する愛しみの感覚を蘇らせてくれる。(藤本由香里氏評)

 しばしば「壊れる」などと表現される、ギャグ・マンガ家の過酷な精神状態からの生還の記録である。実体験が作家の内部で濾過され、独自の表現へと昇華して生まれた傑作である。過酷でありながら、どこか楽しげにも思える放浪生活の中で出会う、ちょっと世の中からずれた人々は、吾妻マンガの登場人物そのもの。作者の目に映る不条理な妄想世界は、いまや厳然たる実話となって読者の前に広がる。その不思議な感覚を、いかにもマンガらしい、吾妻の丸っこい絵柄が支えている。いま吾妻ひでおはギャグ・マンガの絵と文法で、とんでもない世界を語り始めた。(村上知彦氏評)

まだ会場の用意ができていないので、控え室へ。資料でも読んでいようかと思ったら、吾妻先生のファンクラブ関連での知り合いである、Gさん、Tさんほかが入ってきた。両氏と久闊を叙する。両氏らが編集した第34回日本漫画家協会賞大賞受賞記念の冊子「吾妻讃」(「ななこ・ざ・すーぱーがーる」特別増刊号)を御恵贈いただく。
一行の中に法体の人物と、小柄な眼鏡の女性がいる。おそらく、と思ったら、やはり蛭児神建(元)さんと夫人であった。
ほどなく会場の用意ができたので、移動する。
始まるまでまだ時間がかなりあるので、展示されている受賞作のパネルやサイン本等を見にいったり写真にとったり。
そうこうしているうちに開場がだんだんうまってくる。吾妻先生ゆかりの人たちも多数。いちいち名前は書かないが、高千穂遙さんが随分やせていたのにはびっくりした。
ところで、こういう式典の場なので、筆者は普通にスーツで行ったのだが、出席者の中にはフリーの人も多いので、服装は多彩。Tシャツ姿もめずらしくない。
贈呈式は秋山社長ほかの挨拶、来賓紹介、選考委員紹介(香山リカさんはトレードマークの眼鏡姿ではなかった)等のあと、贈呈式。吾妻先生は「尊敬する手塚先生の名前のついた賞をいただけて光栄です。今後はロリコンとかをやめまして、まじめに生活していきたいと思います。みなさんもアル中とかは気を付けてください。」とごくみじかい挨拶。もともと人前とかの苦手な人だし、今は鬱病もあるので、この程度の長さでも(うけていましたが)結構たいへんだったろうと思う。始終うつむき加減で、しんどそうだったし。
なお、先の挨拶、朝日新聞紙上ではロリコンのあとに(マンガ)とはいっていたけど、本当にロリコンマンガという意味だったのかどうかは不明。ちょっと前に公式サイトに「ChuBohを買うのをやめた。」とか書いていたし。
他の受賞者の挨拶は、長くなるので略。ひぐちアサさんも伊東理佐さんもしっかりメモを用意してきて、それなりの長さ。小野耕世さんは、御尊父(漫画家の小野佐世男)と手塚の思い出などにはなしがおよぶと、感極まって、何度も言葉が途切れていた。
贈呈式が終わってパーティー。実はこのパーティーの最中に、大賞受賞者への花束贈呈がある。そしてそのプレゼンターは、一般読者推薦者、すなわち筆者ともう一人の推薦者なのだ。ちなみにもう一人の方は女性。多分男女一人ずつ選んだのだろう。この女性は筆者とはちがい、むかしからの吾妻ファンではないもよう。これは偶然だろうが、期せずしてバランスが取れたといえよう。
花束をわたす際に一言話してもらう、と聞いていたので、お祝いの言葉を考えてきていたのだが、司会者は、筆者に対しては「どうしてこの作品を推薦しようと思いましたか。」とふってきた。
そこで、用意してきたコメントを即興でアレンジして、次のごとく述べた。「私事になりますが、私、二十年ほど前(の吾妻ブームのころ)、吾妻先生のファンクラブでいろいろと活動をしていました。しかし、その後、作品数も少なくなり、また、「失踪日記」に書かれているようなこと(失踪、アル中)の噂も伝わって来、心を痛めていたのですが、このたびその経験を見事な作品に昇華されました。これを読んで、今年の大賞はこれしかない、と思いました。」
てなわけで、たいへん緊張しながらも、なんとか大役を果たし終えた。
そのあと、Gさん、Tさんらに「そんな役割があったのか。だったら今日の記念に是非とも先生のサインをもらっておけ。」と言われる。筆者は先生のサインはすでにいくつか持っているため、今日は遠慮しておくつもりだったので、色紙も本も持ってきていなかったのだが、両氏らに背中をおされて(感謝しています)、先に書いた資料の小冊子の「失踪日記」の紹介ページに(失礼ながら)サインをもらう。
19時過ぎぐらいにパーティー終了。会場を出ようとすると、入口に花が。菊地成孔さんから吾妻先生に、だった。
そのあと、Gさん、Tさんに打ち上げ、というか、祝杯の宴をさそっていただき、有楽町のだん家へ。ほかにOさん、さらに悟東あすか師。悟東師は、吾妻先生の唯一の直弟子いうべき方(アシスタントは弟子ではないとすると)。いろいろ興味ぶかいお話をうかがう。ほかにもなつかしい話あり、意外な話ありで、閉店まぎわまで。
本当にうれしく楽しい一日だった。
ところで後日、「手塚治虫文化賞」事務局から封書がとどく。開封してみたら、一般読者推薦者から抽籤で図書カードが当たった、とのこと。二重に当たったのか、贈呈式招待者にはもれなく(といっても二人だが)くれたのかはわからないが、とてもうれしい。デザインは勿論、「失踪日記」の表紙。勿体なくって、使えません。
ところでこの封筒(長辺に封がある)を開けるとき、のりづけ部分にはさみをつっこんで切ったら、送り状も一緒に両断してしまった。ああ、なんたるミス。

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コメント

手塚治虫文化賞贈呈式のレポートをたまに目にしておりましたが
その中に粗忽亭さまがいらしたとは。よかったですねえ。
粗忽亭さまからあずま先生に渡った花束は何を思うか。
粗忽亭さまが自分の好きな、本当に贈りたかったのは何でしたか。
思いのたけのコメントを聞いていただいて幸せ者ですね。

>たろうさま
コメントありがとうございます。
まことに僥倖でした。四半世紀ファンを続けてきた甲斐があったというものです。
(すこし形はかわりましたが)「おめでとうございます」の言葉をああいう場で贈ることができた、それ以上望むことはありません。
漫画史にだけではなく、おそらくは日本の文化史に残るであろう傑作の片隅にかかわれて、本当に幸せ者だと思います。

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