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あきれるほどレベルの低い論説

10月31日付けの朝日新聞に載っていた「風考計 アメリカ "with you"と言わせて」(論説主幹 若宮啓文)はちょっとあきれるぐらいレベルの低い文章であった。
冒頭からこうだ。

 先ごろ面白い話を聞いた。
 85年11月。世界の視線を集める中、レーガン米大統領とソ連のゴルバチョフ書記長がジュネーブで初めて会ったときのことだ。レーガン氏は(中略)「アメリカでは、ホワイトハウスの前でいくら私の悪口を言い、『レーガン辞めろ』と気勢を上げても、彼は捕まることもなく安全に家に帰れる。そういう国なんだ。」
 するとゴルバチョフ書記長が「それなら我が国も同じですよ』と言い返した。「赤の広場で、いくら『レーガン辞めろ』と叫んでも、安全に家に帰れますからね」

この話、事実だとは思えない。なにしろこれって古典的なアネクドートなのだ。
たとえば「スターリン・ジョーク」(平井吉夫 編)という本がある。私の持っているのは90年3月発行の文庫版だが、単行本は83年に出ている(あとがきの日付けは83年6月になっている)。ちなみに文庫版は版を組み替えることなく、単行本をそのまま縮刷したもののようだ。
この本に「自由」というタイトルで次の話が載っている。

 アメリカ人とロシア人が“言論の自由”について言い争っている。
「まあ、聞きなさい」とアメリカ人が言う。「私が机に坐ってホワイト・ハウスに手紙を書くとしましょう。文面はこうです。『アメリカ合衆国大統領は大馬鹿野郎だ』。さて、私になにが起こると思いますか? なんにも起こらない!」
「ふうん、そんなことか」とロシア人が答える。「私が机に坐ってクレムリンに手紙を書くとしましょう。文面はこうです。『アメリカ合衆国大統領は大馬鹿野郎だ』。さて、私になにが起こると思いますか?」

当ブログのように、何の影響力もない場所に書くヨタ雑文ならともかく、天下の朝日新聞のオピニオン面に論説主幹が署名入りでこんなことを書かないで欲しい。こんなポピュラーな政治ジョークを真に受けて、いかにも事実のように書くとはあきれる。本気にする人が出てきたらどうする。いわんや、そこから論を立てることにおいてをや。
さらに、中盤にはこのようにある。

 果たして日本では、自国の首相をあのように(引用者注 『華氏911』のこと)指弾する映画をつくり、外国に配給するようなことができるだろうか。国辱者は許さないと、激しい圧力がかかるのではないか。

考えすぎです。日本人の大半が小泉首相を支持しているわけでも、現体制を支持しているわけでもないでしょう。勿論、怒る人、反対する人もいるだろうが、それはアメリカとて同じこと。ディズニーの配給拒否騒動を忘れたのか。ひょっとして日本の民度を思いっきり見くびっていませんか。
そして、最後の方にはこのような文が。

 そういえば、イラク戦争が混乱の様相を深めてきたころ、日本には「消火が先決」という声があった。「目の前で家が燃えているのに、犯人捜しをしている場合ではない。まず、みんなで消火に協力するのが当然だ」と。
 しかし、である。「早まるな、危ないぞ」と仲間にさんざん止められたのに「大丈夫だ」と振り切って火をつけたのは誰だったのか。危険な火消しを頼むなら「すまない。ちょっとやり損じてしまった」と、頭をぺこっと下げるくらいのことをしたらどうか。

正論である。しかし、それはイラク3バカ事件のときも同じじゃないのか。「危ないぞ」とさんざん止められたのに振り切って危険地帯行きをしてしまった者の家族なりが救出を頼むなら「すまない。迷惑をかけた」と、頭をぺこっと下げるくらいのことをするべきだったのだ。それを「悪いのは政府。救出のためなら自衛隊撤退もあたりまえ」と言わんばかりの態度に世間は怒って批判が噴出したのだ。その批判をけしからん、と言っていたのは、あなた方朝日新聞の論説委員たちではなかったのか。
古典的ジョークを事実と信じ、自国民を軽蔑し、平気でダブルスタンダードを(多分ダブルスタンダードであることに気付きもしないで)振りかざす。こんなレベルの低い論説を読まされる読者は大いに迷惑だ。
ここ数年の「素粒子」欄の程度の低さには常々あきれていたが(その批判だけでデイリーのブログが書けるぞ)、その執筆者(論説委員だったと思う)の親玉である論説主幹がこれじゃあ、それもむべなるかな、というところだ。

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